合格答案を「シンプルに」考える (1)
いつもお読みくださいましてありがとうございます
今日から2~3回に分けて、本試験で合格ラインを超える答案を4通書くための3つの改善点を考えていきます
1つ目は時間
これは「解答時間が制限時間内に収まるか」です
2つ目は解答スペース
これは「答案が1通あたり4ページ以内に収まるか」です
3つ目は内容
内容はさらに、
(1). 必要か(2). 正確か (3). 十分か
に大別して考えます
1. 時間:なぜ「試験時間」はタイトなのか
これは結論、提出された受験生の答案に「優劣をつける」ためですよね
「試験時間の使い方」は、合否を当然に左右します
「試験時間」について考えたいことは次の3つです
(1). 与えられる試験時間の概要
弁理士試験の論文式試験(必須科目)の試験時間は、
-
特実:120分/2通
-
意匠:90分/1通
-
商標:90分/1通
ですね
-
特許・実用新案は。~60分/通で2通をスピーディに書き終える力
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意匠/商標は、~90分/通で1通を完成度高く書き抜く力
と、それぞれ異なる力が求められます
(2). 与えられた試験時間の使い方
「特許・実用新案」と「意匠・商標」とでは、与えらられる試験時間が異なりますから、必然的に、その時間の使い方も異なります
一方で、どの科目であっても、論文式試験の試験時間は次の5つのステップに分けることができます
(3). 「では、はじめてください」から「終了です」までの流れ
こちらが、試験時間スタートから答案提出までの5つのステップです
①. 問題文の読解
問題文の読解は、「事案の把握」+「問いの把握」が2本柱です
両方とも正確にできる必要があります
もっとも、しいて優劣をつけるなら「問いの把握」のほうが大事です
-
「事案は把握できたけど、問いに答えきれていない」
-
「事案は把握しきれてないけど、問いには答えてる」
の2択なら、後者のほうが合格可能性が高いだろうと考えるからです
もっとも、言うまでもなく、
-
「事案も把握できて、問いに答えきれている」
がベストです
②. 事案整理
条文説明問題 (「一行問題」と呼ばれることもあります」以外は、設例で示された事案の整理が必要です
事案は通常、
-
登場人物 (誰が)
-
行為 (どうした)
-
客体 (何を)
からなります
さらに、問題によっては、
-
日付/時期 (いつ)
-
場所 (どこで/どこへ)
が含まれることがあります
なお、設例は、
-
登場人物を増やす
-
できごとを増やす/隠す
-
古い順に記述しない
によって複雑化でき、把握と整理の難易度を上げることができます
また、論文式試験は事案整理選手権ではないので、事案整理に時間を割きすぎないことが肝要です
③. 答案構成
「問いの把握」と「事案整理」とに基づいて、
-
答案に何を書くか
-
どの順番で書くか
をメモ書きします
答案構成も、くれぐれも書きすぎないことが肝要です
あくまで本試験で提出するのは答案のみ、答案構成用紙の記載が詳しくても1点も得点できません
④. 答案構想
この「答案構想」には、「答案構成」と「答案作成」の「つなぎ」の役割があります
この点について、従来型・普及型の解説だと、「答案構成が終われば、あとは書いていく」と説明されることが多いのではないでしょうか?
もちろん、それでも合格ラインを超える答案は書けますし、実際に僕も受験生の時はそうしてました
ただ、合格後に改めて答案完了までの工程を分析しながら最適なプロセスを検証したところ、この「答案構想」を挿んだほうが、今の本試験では高得点がしやすいとの結論に至りました
この答案構想で何をするか*は、記事を分けて、あるいは別の機会に説明したいと思います
*註
答案練習場の参加受験生にはすでに解説し、直近10年分の過去問を題材に40通分の答案構想の実践をやって見せています
正規のアクセス権限がある受験生は、それらの動画を必要に応じ参照してください
⑤. 答案作成
答案構想まで終われば、あるいは最低限、答案構成ができたら、あとは答案を書いていきます
書きはじめるまでに費やせる時間は、答案1通あたり20分前後が理想です
ただし、実際の本試験では、午後イチの意匠、最後の商標と、科目を追うごとにスタミナを激しく消耗しますから、科目が進むにつれてスピードは全体的に遅くなります
自分が3ページをどのくらいの時間で書けるのかは、普段から計測しておきましょう
「改善できるのは、測定したものだけ」
という工学の大原則を肝に銘じたいです
(4). 試験時間が足りない?!そのとき、どうするか?
答案完了までの5つのステップが4通とも首尾よく進めば誰しも苦労しませんが、実際には途中で間違う・混乱するといった不全は発生することもよくあります
そのため、日々の受験勉強では、答案の完成度を高めるための訓練を重ねる一方で、「本試でハマったらどうするか?」も前もって考えておきましょう
そのためにも、「事前のシミュレーション (=本試験と同じタイムテーブルの答案練習)」はマストです
「初年度はぶっつけ本番」といえども、6月の日曜日を利用して、本試験と同じタイムテーブルで、1日で答案を4通書きましょう
1日で答案を4通書いたことがある人のみが知っている体力の消耗は、たとえ論文式試験の受験がはじめてだったとしても、少なくとも1回はやっておいたほうが無難です
また、解答を書いている途中で自分の見立ての誤りに気づいたときは、一旦手を止め、設問文に目を通しながら、残り時間でどうするかを考えます
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慌てふためき、パニックになる時間
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冷静に対処を決める時間
どちらも、流れる時間は変わらないのに対し、得点・失点の最小化に結びつくのは「冷静のみ」一択です
残された時間を見つつ冷静に対処を検討した結果、挽回できない場合は諦めます
残りの問題をきちんと解答できれば、トータルの得点はあがります
あるいは、最後の最後に誤りが気づいたとしても、残りの科目、残りの答案で挽回できます
小問1問の間違いのみで、合否が決まるわけではありません
以上、今回のレターでは論文式試験の答案を完成させるまでの時間の使い方について、考えを整理しました
次回のレターでは解答スペースと内容とについて、改善点を紹介します
それでは、本日も最後までお読みくださいましてありがとうございました
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