「答案に何を書けばよいか分からない」ときの切り抜け方
いつもお読みくださいましてありがとうございます
昨日のレターでお話した、短答の過去問演習チャレンジの検証結果の続きは追伸に書きます
短答の話からはじめると止まらなくなって、条文説明問題の過去問解説に毎回入れないので (汗)
宿題として出していたのは平成25年の商標・問Iです
形式面としては、
配点50点 ⇒ 最大45分で、MAX2ページ程度書く
と押さえることができればOKです
実際の本試験では、問IIの事例問題を含めて通しで30分を答案構成に費やしたのち、30分かけて問Iの答案を書いて、残り30分で問IIの答案を書くといったイメージです
内容を見ていきましょう
今回は1つの問題文で複数の事項について解答を求められています
この出題スタイルは科目や出題形式を問わず頻出なので、問題文を読みながら解答を求められている事項の数をナンバリングすることをオススメします
ナンバリングはこんなふうに「番号+アンダライン」で目立たせます
答案構成は、基本的にこのナンバリングの順で項目を並べます
問I
1.1条の趣旨
2. 商標権者のギム
3. 商標権者が受ける不利益
ただ、「1条から導き出される商標権者の義務」って何でしょうか?
「商標権者の義務」だなんて普段から考え続けているトピックではなく、スムーズに解答できる内容ではなさそうですよね
このように、
「解答する内容が直ちに思い浮かばない」
ときには、
・「解ける問題をヒントに」考える・他の産業財産権法との比較で考える・設問表現において用いられている「用語の意味から類推」する
ことで難局を打開していきましょう
1. 「解ける問題をヒントに」考える
本問で言うと、まずは1条をまとめることが先決です
ただし、1条の趣旨は条文の引き写しにならないよういしましょう
条文を書き写すことは貸与法文集を見れば受験生の誰でもができるので、それだけでは点数になりません
(実際の解答表現は、後述する答案例を見てください)
次に、最後に問われている「商標権者が受ける不利益」について、不利益=マイナスですよね
これは商標権者にとっては、
-
商標権の行使が制限される
-
商標権をはく奪される
の2つが不利益ではないでしょうか?
このうち、商標権の行使の制限については、無効理由がある場合(準特104条の3)が思い浮かぶでしょう
ただし、商標登録の無効は、商標権者が義務を果たさなかったことによる不利益ではないので、本問において解答するには遠すぎます
一方で、「商標権をはく奪される」ことについては、取消審判が思い浮かぶでしょう
このうち、不使用取消審判は商標権者が登録商標を使っていないことによる不利益で、不正使用取消審判は、商標権者が登録商標をちゃんと使っていない(or使わせていない)ことによる不利益です
この点について、上記の2つは、いずれも商標権者が果たすべき義務を果たしてないときに受ける不利益と言えそうです
ということは、答案構成は、
問I
1.1条の趣旨
2. 商標権者のギム
(1). 使用義務?
(2). 正当使用義務?
3. 商標権者が受ける不利益
(1). 不使用取消
(2). 不正使用取消
とできそうですね
つまり、3.で答えた2つの不利益を裏返すと2.で答えるべき商標権者に課された2つの義務になります
もっとも、この2つの不利益の裏返しで2つの義務を解答するというアプローチのみでは、本試験当日に解答項目を決定する理由としては弱く感じると思います
そこで、別の角度からも解答内容の正しさを考えます
2. 設問表現において用いられている「用語の意味から類推」する
リストアップの順と前後しますが、先にこちらを解説します
本問で問われているのは、商標権者の「義務」ですね
「義務」を解答するのならば、その解答表現は、
「○○しなければならない」
であると決まります
そこで、権利化後の条文に絞って、商標法の中から、「○○しなければならない」という規定を探しましょう
すると、商標権の存続期間の更新の規定において、「○○しなければならない」は見つかります
ただし、この規定は商標権の存続期間を更新しようとする者に課せられた制限であって、商標権者に課せられた義務というわけでないです
同様に、団体商標の移転の制限や登録料の規定なんかも、「1条から導き出される商標権者の義務」とは離れます
他にありますでしょうか?
条文を最後まで見ていくと、73条がありました
この商標登録標示を付する努力義務は、商標権者に課された義務ですし、「1条から導き出される義務」と言えそうです
実際、たとえ本問の項目2について何も書くことが一切思い当たらなかったとしても、73条は書きたいです
ただ、1条から導き出される商標権者の義務が73条だけというのも解答としてはさびしい
そこで、73条を抽象化して考えてみると、要するに73条が商標権者に課してる義務は、
登録商標、ちゃんと使ってよね
ってことです
この切り口は、先に考えた「不利益」から解答を絞るアプローチとも整合します
つまり、商標権者に課された義務として
1条の趣旨
2. 商標権者のギム
(1). 使用義務?
(2). 正当使用義務
3. 不利益
(1). 不使用取消
(2). 不正使用取消
は解答できそうです (ちゃんと=「正当」と言い換えてます)
最後に、「商標権者に登録商標の使用義務がある」と言ってしまって大丈夫でしょうか?
もちろん、たとえ間違えても致命的な痛手はないので書いてしまって大丈夫ですが、念のため1条の規定と整合性が取れてるかは入念にチェックしたいです
大別すると、商標法が達成したい目的は、
産業の発達
需要者の利益の保護
の2つです
このうち「需要者の利益の保護」は、正当使用義務や不正使用取消と親和性が高いと解釈できるでしょう
平たく言うと、不正使用されてるなら取り消すことで需要者の利益を保護できますし、不正に使用させないよう、正当使用義務を課すことが「需要者の利益の保護」(1条)につながります
ということは、もう1つの目的である「産業の発達」(1条)は、不使用取消や使用義務と結びつくでしょうか?
この点については、登録商標を使用しないのに産業の発達が実現するとしたら商標法なんていらないでしょうから、解答の流れとしても問題なさそうです
ただ、産業の発達のために商標権者に使用義務が課されていると言ってしまっていいかは、個人的に疑念を払しょくするには至らりませんでした
そこで、さらに別の切り口から解答の妥当性をチェックしましょう
3. 他の産業財産権法との比較で考える
現時点で払しょくできない疑念は、
商標権者に「登録商標の使用義務」を課していると解答して問題なさそうか?
です
第3のアプローチとして、隣接する他の産業財産権法、具体的には特許法や意匠法との比較で考えてみます
すなわち、特許権者には特許発明の実施義務、意匠権者には登録意匠の実施義務が課されているのか?
結論から言うとこれらはいずれもノーと言っていいと僕は考えました
まず特許権者は、特許権の保護対象である発明の公開によって「産業の発達」(1条)への寄与を一定程度していますよね
また、意匠権の保護は「実施しないことによ」(パリ5条B)って「失われない」(同条B)に考えると、意匠権者に登録意匠の実施義務があると考えることはできません
その一方で、商標法の法目的は、「産業の発達」のみならず「需要者の利益」(1条)の「保護」(同条)であり、「登録商標の使用」⇒「業務上の信用の維持」⇒「需要者の利益の保護」とつながっていくと考えられます
ならば、「正当使用義務」から一歩踏み込んで、商標権者に登録商標の使用義務を課すことで法目的を達成しようとしていると説明も成り立ちそうです
以上の検討をふまえて、本問の答案構成は、
1条の趣旨
2. 商標権者のギム
(1). 使用義務
(2). 正当使用義務
3. 不利益
(1). 不使用取消
(2). 不正使用取消
に決めました
本問のように「何を答案に書けばよいか分からない」ときには、
・解答できる項目から
・関連する条文の規定ぶりから
・他の法域の規定との比較から
といった、複数の切り口から解答をひねり出しつつ、解答の妥当性を検証していきましょう
最後に答案例をお見せします
文字数は618字で、解答全体が1,825字で、問Iの解答は相対的に少ないです